東京、名古屋。都市部で働いた経験を経て、30歳を機に熊本へ戻ってきた大田黒竣平さん。現在は熊本の酒造メーカーで営業として活躍し、県内外へ焼酎の魅力を届けています。かつては結果を求められる環境の中で、心身ともに追い込まれたこともありました。それでも地元に戻り、自分の「好き」と重なる仕事に出会ったことで、働くことの楽しさを取り戻したといいます。育った土地で働くこと。人とのつながりの中で仕事が広がっていくこと。大田黒さんが見つけた『熊本で働く楽しみ』について話を聞きました。
- 東京から熊本移住2年目
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大田黒竣平さん(30代)
会社員

都市で働くというチャレンジと、結果を求められる日々
ーこれまでの経歴を教えてください。
熊本市生まれで、街中まで5分ほどで行けるような場所で育ちました。熊本の大学に進学し、卒業後は大手人材派遣会社に就職しました。就職活動のときは「一部上場企業で働きたい」という思いがあり、配属が東京になったことをきっかけに上京しました。今思えば、自分なりの大きなチャレンジでしたね。最初は通勤ラッシュやスピード感のある仕事に、かなり戸惑いました。
ー当時、プライベートはどのように過ごしていましたか?
高校時代は、空手に明け暮れていましたが、実は野球の横浜ベイスターズの大ファンで。月に3回は、スタジアムでの観戦に足を運んでいましたね。慣れない環境でも、好きなものや趣味があったことが、最高の息抜きだったかもしれません。
ー東京での経験はどんなものでしたか?
仕事のノルマは厳しくて、常に結果を求められる環境でした。入社したときは「3年は頑張ろう」と思っていたものの、自分の気持ちと仕事が重ならない苦しさも味わいました。最終的に東京で4年間、名古屋で2年間の勤務を経て、転職しました。ですが、転職先では休みがほとんどなく、気持ち的にも追い詰められていきました。
熊本で過ごした、人生の休養期間
ー熊本に戻ろうと思ったきっかけは何ですか?
元々、30歳を目処に熊本へ戻ろうとは思っていたのですが、正直に言うと「少し休みたい」という気持ちが大きかったです。そのときの自分には、人生の休養期間のような時間が必要だったと思います。熊本に戻ってきてからは、愛犬と戯れる時間を2ヶ月ほど過ごしました。何も考えずにのんびりしていたら、だんだん元気が戻ってきて(笑)。今振り返ると、東京と熊本では人との距離感も違います。知らず知らず心が疲れていたんだと思います。あのまま無理をしていたら、心が折れていたのかもしれません。
惚れ込んだ焼酎の味を、まっすぐ届けたい
ー今は酒造メーカーの営業マンとして活躍されていますが、どのような経緯で入社されたんですか?
学生時代と同じように、マイナビやリクナビで就職活動をして見つけました。地場の酒造メーカーを選んだ理由は、大学時代からお酒の飲み比べが好きだったからです。東京にいた頃、熊本の焼酎がなかなか飲めないことに気づいて、どこか寂しさを感じていました。ふるさとの味を、もっと多くの人に届けたい。そんな思いが、自分の中にあったんだと思います。
ー現在のお仕事について教えてください。
入社して半年ほどですが、営業として県内全域に加え、関東圏も担当しています。鹿児島や宮崎への出張、イベントでの販売など、動き回る日々です。焼酎業界は決して追い風ではありません。原料の米価格も上がっていますし、若い世代のアルコール離れもあります。でも実際に飲んでもらうと、「これなら飲める」と言ってもらえることも多いんです。炭酸割りなどで提案すると、印象がガラッと変わることもあります。何より、お酒を囲む場は人とのご縁を紡ぐもの。思い出とセットだからこそ、一人ひとりに手渡すような気持ちで届けていくことが大事だと思っています。
ー熊本で働く魅力を教えてください。
幸福度が全然違います。今は仕事が純粋に楽しい。月曜日が嫌だとは思わないんです。
小学校の同級生の実家のお店と仕事で関わったり、同級生のお店にうちのオリジナルグラスを届けたり(笑)。昔からのつながりの中で、関係性が自然に広がっていく。ビジネス以上の関係性があるのは、熊本ならではだと思います。
ー転職で苦い思いを経験された過去を、どのように乗り越えたのでしょうか。
人材派遣会社で働いていたこともあって、職歴は正直気にしていました。熊本に戻ってからは、知り合いのバーを手伝ったり、コールセンターで少し働いたりもしました。でも、なぜ転職したのか、なぜその選択をしたのか。自分の言葉で説明できることが大事だと思っています。きちんと自分のストーリーを伝えれば、理解してくれる場所や人はきっとあると思います。
迷う気持ちは、次の一歩のはじまり
ー移住やUターンを迷っている人へ。
住む場所や仕事を変えるのは、怖いですよね。僕も不安はありました。でも、迷うくらいならやってみてもいいと思います。向いていないと感じる環境で、無理を続ける必要はないと思うんです。地元であろうとなかろうと、熊本は困ったときに誰かが手を差し伸べてくれる温かい土地柄があります。少し肩の力を抜いてもいいと思える場所です。熊本に戻ってから、働くことの意味が少し変わりました。僕は戻ってきて、本当によかったと心から思っています。









