静岡で生まれ育ち、大学から上京。東京でブランディングや広報、編集の仕事に関わってきた橋本仁穂(はしもと・きみほ)さん。旅先で出会った熊本の“大人たち”の空気感に惹かれ、勢いのまま熊本へ移住。「バイトで暮らせればいい」くらいの軽い気持ちだったはずが、気づけば仕事も仲間も増え、結婚・出産を経て、暮らしはゆっくりと形を変えていきました。焦りから少し距離を置いた先に見つけたのは、自分に集中できる時間と、人とつながる安心感でした。
- 東京から移住3年目
INDEX
橋本仁穂さん(20代)
編集/ライティング(半分リモート)

気楽にはじめた熊本暮らし
ー熊本に移住したきっかけは何ですか?
最初は旅行で来たのがきっかけです。福岡で遊んで、阿蘇を通って熊本市内まで車で来たんですけど、熊本市内がすごく過ごしやすくて。だから、「理由」というより「体感」で決めた感じです。
ー熊本で印象に残っている出会いはありますか?
街中で出会った少し年上の大人の方たちです。平日の昼間にお店を閉めて、ふらっとランチに行く姿を見て、「なんかいいな」と思いました。
ーそこから人とのつながりはどう広がっていきましたか?
街中の花屋で花を買ったことをきっかけに、街を案内してもらったり、おいしいお店を教えてもらったりしました。旅先なのに、いい距離感で人が関わってくれる感じがあって、「この街には、いい大人がいっぱいいるんだ」と新鮮に感じましたね。
ー旅のあと、どれくらいで熊本に来たのですか?
旅から2ヶ月後くらいにはもう来ていました。ちょうど仕事を辞めたタイミングで有給消化中だったので、「どこにいても収入が入らないなら、早く動こう」と思って。
ー移住というより、もっと軽い感覚だったんですね?
「移住」というより、「引っ越し」だと思って来ました。ずっとここに住む覚悟というより、合わなければまた動けばいい、くらいの気持ち。だから重くならずに始められたと思います。
東京から離れ、自分の呼吸を取り戻す
ー東京での暮らしはどんな感じだったんでしょうか?
東京は同世代でも「自分で走っている」「スターです」みたいな人に出会うことも多くて。焦りや競争の空気があった気がします。キラキラしていて楽しいけれど、近すぎると吸い込まれてしまう感じもありました。
ー熊本で出会った“大人”は違いましたか?
全然違いましたね。熊本は「自分で何か作っている人」が思ったより多くて、びっくりしました。好きなことを仕事にしているけど、無理をしていない。自然体で暮らす感じに惹かれました。熊本なら、自分もそういう働き方が叶うかもしれないと思えたんです。
「やってみる?」から広がった仕事
ー熊本に来た当初、仕事はどう考えていましたか?
正直、最初は「バイトで暮らせればいい」くらいの感覚でした。実績があるわけでもないし、やりたいことはたくさんあるけど、具体的に何をしたいかも決めきれていなくて。
ーそこから、どうやって仕事が増えていったのでしょう?
「暇だし何でもします」っていうノリで手伝いに呼ばれて、現場に関わる中で、「できること」が増えていった感覚があります。モデルもするし、編集にも少しずつ関わって。その中で、やっぱり「書きたい」と思うようになって、ライティングの仕事も増えていきました。
ー東京での肩書きが外れたことは大きかった?
大きかったですね。東京にいたら、どこに行っても「以前あそこで働いていた人」になってしまう。でも熊本では、誰も私のことを知らない。単純に「東京から来た人」としてスタートできて、何をしても自由な感覚がありました。
ー熊本で一番ほっとした瞬間はどんな時でしたか?
「応援される」という経験はこれまでもあったのですが、「受け入れてもらう」という感覚はあまりなかった気がします。熊本に来て、本音を言える相手ができたことが大きかったです。例えば、当時のバイト先のオーナーに「これどう思う?」と聞かれたら、正直に「ちょっと違うかも」と言えるようになって。そういう日々のやりとりの中で「信じてくれる感じ」があって、安心できるようになりました。
ー暮らしのテンションは変わりましたか?
最初は気を張っていて、「ちゃんとしなきゃ」と思っていました。でも友達が増えて、頼れる人ができて、だんだん緩んできて。「ちゃんと頑張らなきゃ」から、「楽に自分らしく過ごせている」へ、体感が変わっていきました。
熊本を拠点に、自由な働き方へ
ー現在の仕事スタイルを教えてください。
熊本を拠点にしつつ、リモートで仕事をしています。チームは少人数で、私は編集担当。熊本と長野(チームの拠点)をオンラインでつないで進めています。
ー熊本に住みながらでも仕事は回せますか?
回せています。移動もしながら働けるので、東京・長野・静岡を行き来しつつ、生活のベースは熊本に置く形ができています。
ーこれからやってみたいことはありますか?
本屋をやりたいです。あとは、家に人が来て、ちょっとお茶して休憩していくような空間をつくりたい。お菓子を作って出す日があるだけでも楽しいなと思っています。旅行もたくさんしたいです。日本も海外も。
ー熊本のどんなところが好きですか?
人ですね。優しいというより、好きなことをしている人が多い。見ていて楽しいし、話すともっと楽しい。かっこいい人が多いなと思います。
自分らしく居られる場所に根を張る
ー地域に馴染むコツはありますか?
最初はお店の人たちとのつながりからでした。面白そうな場所に行くと、知っている人がいて、その人がまた別の人をつないでくれる。でも一番は「どちらが自分らしいか」だと思います。東京も好きだけど、日常的に誰かに会いたいと思うのは熊本。だから熊本を“基本”にして、遊ぶときは東京に行く、というバランスが心地いいです。
ー家族ができて、暮らしはどう変わりましたか?
2025年に結婚、昨年12月に娘が生まれて、生活は大きく変わりました。思うようには働けないけれど、不思議と東京にいた頃よりも焦燥感は少なく、穏やかな日々を過ごせています。同世代の友達もでき、家族も増えました。夫の実家が近く、困ったときに頼れる存在がいることも心強いです。みんなが子どもの誕生を喜んでくれたのも、すごく嬉しかったです。
ー最後に、熊本への移住を考えている方へメッセージをお願いします。
私はいま、熊本での暮らしがとても好きです。最初から「移住」と思わなくてもいい。「引っ越し」くらいの感覚で来てみると、きっと生活は自然に始まります。合わなければまた動けばいいし、見知らぬ街の中にも、それぞれの居場所はちゃんとあると思います。









