熊本独自のファッション文化を、全国に発信していきたい。

全国規模の人気セレクトショップのMD(マーチャンダイザー)として、東京で活躍していた岩崎さん。2021年12月に地元の熊本市にUターンし、熊本城近くの小さなビルで、古着店「サハール」をオープンしました。ファッション業界の花形ともいえる仕事を辞めてまで、岩崎さんが手にしたかった生き方とは。移住までの経緯と、熊本市で働き、暮らすことの魅力を聞きました。

  • 熊本→大阪→熊本→東京(2年目)

INDEX

岩崎さん(30代)

古着店「サハール」店主

仕事の捉え方が変わった

古着店「サハール」店主

ー 岩崎さんがファッションに興味を持ったきっかけを教えてください。

中学生のときに文化祭のミュージカルで衣装係になり、「服を作る仕事って面白そう」と興味を持ちました。高校は服飾デザインコースを選択し、卒業後は、大阪にあるスタイリストの専門学校へ。都会への憧れがあって熊本を出ましたが、大阪のまちに馴染めず、1年経たずに熊本へ帰ってきました。

しばらくは、熊本の洋服屋でアルバイトをしながら、「いずれは東京に行って働きたい」という思いを抱き続けていました。熊本はよく「ファッションのまち」といわれますが、個人的にはヴィンテージの店が多いイメージが強くて。今思うと、当時は熊本の一部のお店しか知らず、「ファッションの最先端を吸収するなら東京だ」と漠然と思っていた気がします。


ー どのような経緯で上京されたのですか。

19歳のときにセレクトショップを全国展開する会社に入社し、その転勤で上京しました。26歳のころです。熊本店のフロア責任者を経て、渋谷にある旗艦店のフロア責任者としてお声かけいただいたんです。会社の重要なポジションで働けることはとても光栄でしたし、ずっと憧れていた東京での生活に、喜びと期待感を抱いて上京しました。

30歳を前に、人生の全体像を見つめ直す

ー東京ではどのような日々を送っていらっしゃいましたか。

東京に行って2年目に本社へ異動になり、MDという役職につきました。商品企画からデザイン、広報、販売まで、ブランド全体の年間計画を立てて管理し、最終決定権を持つ部署です。

会社の中枢を担う仕事はやりがいがありましたが、仕事量が莫大で…。朝、満員電車に揺られて出勤し、ほぼ毎日残業して終電で帰り、家では寝るだけという日々。土日出勤も多く、生活のために働いているはずなのに、働くことがメインになっていました。


ー 熊本への移住を決意したのはいつですか。

28歳のとき、30歳を前にしたタイミングで、自分の人生の全体像について考え始めたんです。結婚してこどもが欲しい、広い家に住んで犬や猫を飼いたい、休みの日は車で出かけたい−。思い描く人生像が、その時の生活とあまりにもかけ離れていて愕然としました。そこで自然と、仕事を辞めて熊本に帰ろうかな、という気持ちが芽生えました。

ちょうどその頃、コロナ禍に突入しテレワークが主流になったことで、「熊本でもオンラインで東京の人たちとつながることができるし、会いたい時は飛行機で1時間半で行ける。東京に住むことにこだわる理由はない」と思い、移住を決意しました。そこから、この「熊本市公式移住情報サイト(熊本はどう?)」で情報収集するなど準備を進め、10ヵ月後の2021年12月に熊本市に移住し、「サハール」をオープンしました。


ー 熊本市を移住先に選んだ理由は。

地元だったことも理由のひとつですが、友人の女性が、熊本市で1人で飲食店を始めて頑張っている姿に刺激を受けたことが大きいです。「私も、『あったらいいな』と思う古着屋を熊本に作ろう」。そう思ったら、移住先は熊本市しか頭に浮かびませんでした。

季節の変化や、自然の香りを感じる心の余裕

ー 移住し、お店をオープンされて1年が経ちました。熊本市で良かったと思うことは?

1年間バタバタでしたが、熊本市だからやってこられたと思います。仕事をする時間は以前とほとんど変わりませんが、心の余裕が全然違うんです。東京では、暗い地下鉄からビル街に移動し、無機質な建物の中で一日中仕事をして、気が付いたら日が暮れている…。そんな代わり映えのない毎日に心がすさんでいきました。

熊本では、紅葉や桜で季節を感じたり、夕暮れ時に1日の終わりを感じたりと、人間らしい生活ができています。自然の香りを感じながらリラックスできるところもたくさんあるので、仕事が大変な時も、心のスイッチのオンオフが楽にできるんですよ。同業者の方たちなどとのコミュニティにもすぐに馴染めて、仕事帰りに飲みに行くことも多いですね。


ープライベートではどんな変化がありましたか。

東京では、家賃や食費などの生活費が高いのでやりくりが大変でしたが、熊本では半分の家賃で、2倍の広さの部屋に住めています。その分のお金で、両親と食事に行ったり、ちょっと贅沢なご飯を食べたりと、時間の使い方が変わりました。

仕事とプライベートをはっきりと分けてはいませんが、仕事の空いている時間にプライベートを楽しんでいる感覚ですね。以前は仕事に追われて、「自分がどんな生活をしたいか」を考える隙もなかったですから大きな変化です。

ベースを熊本に置いて2〜3カ月に1回は東京へ出張に行く、という働き方をしていますが、東京で刺激をもらって熊本でアウトプットするという良いバランスで仕事ができています。そういう意味では、移住して仕事の捉え方が変わったといえますね。


ー熊本と東京のファッション業界の違いを、どのように感じていらっしゃいますか。

熊本はショップとお客さまの距離感が近いので、その分お客さまのファッションへののめり方が強く、熱量を感じます。

東京の友人が熊本に遊びに来たときにショップを案内しますが、みんな「それぞれ個性があって、見て回るのが楽しい」と言ってくれます。東京では、売れるものを売れているところで売る、というのが一般的ですが、熊本は店主の好きなものがその店の色として出ているのでおもしろいんですよ。それはきっと、心に余裕があり、自分が好きなものを考える時間があるからなのだろうと思います。

今後は、こうした熊本のファッション文化を発信し、県外の方が熊本に来るきっかけづくりをしていきたいです。おもしろいイベントも企画しようと、先日は、上乃裏通りにある「Neu」というカフェで、花屋「in the sun FLOWER」とコラボしたポップアップイベントも開催しました。


ー熊本市への移住を検討する方へのメッセージをお願いします。

熊本は食べ物やお酒がおいしいですし、何よりも家賃が安いので暮らしやすいです。熊本に住んで月に1回東京へ旅行に行っても、東京での家賃よりも安いくらいです。移住を悩んでいる方は、まずは月の半分を熊本に住むという軽い感覚で住んでみたら、意外としっくりくるかもしれません。ぜひ、検討してみてください。

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