暮らしの中で、人との距離感が
変わった

日常の心地よさを大切に、人と関わり合いながら暮らしていく

住宅街の一角にある、ブレーメン珈琲店。楽しげな店内に、お客さんからもらったという愉快な帽子を被ってカウンターに立つのが、店主の山﨑けんごさん。週末は妻のあゆみさんも一緒にこだわりのコーヒーを届けています。会社員を辞めて、転勤先であった熊本でお店を開いたその背景を聞きました。

人生を変えてみようと、熊本を選び直した。

元々はけんごさんが転勤で熊本市に住まわれていたんですよね。会社員を辞めてコーヒー屋をひらいたきっかけを教えてください

【けんごさん】いろいろな転機が重なった時に、自分でお金を稼いで生きていけるようになりたいと思ったのがきっかけですね。背景からお話しすると、2016年に私が単身で茨城県から熊本へ来ていて、会社の都合で東京と行ったり来たりしつつも、結婚を機に2020年の夏に妻と熊本で合流したんです。ちょうどそのタイミングでコロナが広がって。それまで様々な人と会う仕事をしていたので、それができなくなった時に考えたんです。当たり前が当たり前でないのであれば、人生変えてみようかな、と。

—コーヒー屋を始めたくて会社を辞めたわけではなく、人生を変えてみようという想いが先行して動き始めたんですね。

【けんごさん】はい。会社を辞めて、何をしようかなと考えて。元々コーヒーが好きだったので、ここからやってみようかと。

—あゆみさんはけんごさんのお話をどのように受け止めたのでしょうか?

【あゆみさん】特に不安だとは感じていなかった気がします。やったことがないので、やってみないと分からないな、と。

—あゆみさんの後押しもあり「ブレーメン珈琲店」が始まったわけですね。人生を変える、ということは引っ越しも含めて、熊本市以外でお店をされる可能性もあったのでしょうか。

【けんごさん】ありましたね。実は2020年に妻と合流した時、長野に異動希望を出していたんですよ。お互いの実家も近いし、長野がいいなと。でも、熊本を選びました。相性が良かったんでしょうね。水が合うというか。他の地域に住んでいたことがあるからこそ、熊本の心地よさを感じています。

熊本での刺激や人との距離が、ちょうどいい。

具体的にどんなところに心地よさを感じますか?

【あゆみさん】私はこれまで地元である栃木、そして山形と東京にも住んでいたことがあるのですが、熊本は人が密集しているわけでもなく、かといって刺激がないわけでもない。隠れた名店を探すのも楽しくて、そのバランスが心地いいですね。先日東京へ行った際に、人があまりに多くて。刺激は多くて楽しいけれど、もうここには住めないと思いました。

【けんごさん】特に東京は僕らにとっての非日常なんだなと。あくまでもたまに楽しむもので、それが日常になってしまうと刺激が強すぎてしまう。

たしかに、熊本での暮らしで「人混みに疲れた」と感じることは少ないかもしれませんね。でも、熊本には刺激もたくさん散らばっている。

【あゆみさん】そうですね。暮らしが楽しくなるお店が多いですよね。チェーン店もあるけれど、こだわりの詰まったお店が多いというか。最近は、うどん屋さんを巡って開拓していました。九州だけどコシのあるうどんもあって、楽しいですね。

【けんごさん】あゆみは街を歩くのが好きだよね。マップを見て、歩いて、気になるお店を見つけるのも上手で。暮らしを極めるプロだと思っています。

暮らしを極める、いいですね。他にも心地よさを感じるポイントはありますか?

【けんごさん】熊本は温かい人が多いですよね。隣近所の人と自然と立ち話するような距離感も心地いいです。お店を始めてからはさらにその温かさを感じています。

知り合いも少ない中での開店準備、大変だったのではないでしょうか。

【けんごさん】開店準備を仲間探しだと捉えて動いていました。不動産屋さんや内装業者さんなど、本当に全くツテがなかったので。調べて見つけたところに飛び込んで、相談して…と動いていたら、本当に仲間ができました。熊本の人は、世話好きな人が多いですね。とてもありがたかったです。

【あゆみさん】開店してからも、このお店を通じて出会える人は多いよね。

【けんごさん】同じコーヒー屋とか、業種が違っても同じように商売をしている人とか、横のつながりが増えましたね。あとは、テレビの取材を受けたことがきっかけで「僕も移住者なんです!」と同じく移住された方がお客さんとして遊びに来てくれたり。

今まで出会えなかった人との繋がりが増えているんですね。東京のように多くの知らない人に囲まれているわけではなく、少し近い距離感で様々な人と関わり合っている。

【けんごさん】やっぱり隣に住む人を知らないのは寂しいし、僕たちにはこの距離感がちょうどいいのかもしれませんね。

大人も子どもも、人と人が繋がる場所へ。

ブレーメン、と聞くとグリム童話の「ブレーメンの音楽隊」を連想します。名前の由来を聞いても良いですか?

【けんごさん】名前が決まる前に、先にロゴが完成していたんです。ひとやすみする場所になって欲しいと思って、休符を組み合わせたものなんです。そこから、どんな名前がいいんだろうと考えて「ブレーメン」に辿り着きました。音のリズムや、「ブレーメン珈琲店」と書いた文字の見た目が気に入ったんです。他にも意味はありますが、直感的にはこの2つですね。

声に出したくなりますよね、「ブレーメン珈琲店」。響きが楽しいです。ひとやすみする場所、というのも素敵ですね。

【けんごさん】一昔前にあった、町のたばこ屋さんのようになりたいなと思っています。ちょっとした時間で、ふらっとこれて、少し話して帰っていくみたいな。ひとやすみがてら、コミュニケーションが生まれる場になると嬉しいなと。

ちなみに、お店に入ってすぐに目に入るけん玉は…?

【あゆみさん】販売しています(笑)先日ふたりでけん玉検定員の資格をとったので、けん玉検定も受けられますよ。

ずっとされていたんですか?

【あゆみさん】一昨年、スーパーのお試しコーナーで触ったのがきっかけでハマってしまいました。技ができるようになった時の達成感も嬉しくて。大人になってからわかりやすくできるようになることってなかなかないので、いいなぁと。

【けんごさん】お店に置いておくと、子どもたちが遊び始めるんですよね。お父さんはコーヒーを買いに来て、子どもたちはけん玉をしにくる、みたいな。子どもが大人にけん玉を教えるシーンもあったりして、いい交流のきっかけになってくれています。

—目指している場所にどんどん近づいているんですね。最後に、移住を検討されている方にメッセージをお願いします。

【けんごさん】やっぱり、僕たちと同世代の30代には熊本がちょうどいいんじゃないかと思います。東京に比べて確実に刺激は少ないので、パートナーができたり、少し落ち着いたタイミングの人にはおすすめですね。

【あゆみさん】ご飯もおいしいしね。刺激が少ないといっても、毎日がつまらなくなることはないと思います。飽きることはない気がする。1時間ほどで壮大な自然に触れられるし、生活圏内にはこだわりのお店もたくさんあって。暮らしを楽しみたい人は、熊本に来てみてもいいんじゃないかと思います。

ブレーメン珈琲店

住所:熊本市中央区新大江3丁目14-85 1F
WEBサイト:https://bremen-coffee-ten.square.site/
営業日・営業時間に関する最新情報はインスタグラムをご確認ください。

お名前:山﨑けんごさん
取材時の年齢:30代
ご職業:ブレーメン珈琲店店主
移住歴:10年目
移住前の居住地:茨城→東京→熊本→山梨→東京→熊本→東京

お名前:あゆみさん
取材時の年齢:30代
ご職業:会社員(リモート)/ブレーメン珈琲店スタッフ
移住歴:5年目
移住前の居住地:栃木→山形→東京→栃木→東京

※記載の情報は、すべて取材時のものです。