自分で決めたわけではない移住。その転機をキャリアの可能性に変えるために
「配偶者の転職・転勤で熊本へ行くことになった」「親の介護のために地元へ戻ることになった」「家族の希望で移住することになった」
移住相談の中では、最初は「自分が望んで決めた移住ではない」と感じていたものの、その後、自分なりの意味や目的を見つけていかれる方も少なくありません。
「現在の仕事を続けたかった」「今の環境が気に入っていた」「本当は移住したくなかった」
そんな気持ちを抱くことも自然なことです。
移住というと、「地方で暮らしたい」「自然豊かな環境で生活したい」といった前向きな理由ばかりが注目されがちですが、実際には家族の事情など、自分ではコントロールできない理由で移住する方も多くいらっしゃいます。
移住は人生の大きな転機
キャリア理論の一つであるシュロスバーグの理論では、人生の転機(Transition)を、
「役割」「人間関係」「日常生活」「自己認識」に変化が生じる出来事と捉えています。
移住はまさにその典型です。
例えば、
・これまでの仕事を辞めることになる
・新しい環境で仕事を探す
・人間関係が変わる
・生活スタイルが変わる
・家族内での役割が変化する など、多くの変化が同時に起こります。
そのため、「不安を感じる」「今後のキャリアが心配になる」ことは決して特別な反応ではありません。
むしろ自然な反応と言えるでしょう。
「なぜ自分だけが…」と思うこともある
家族都合による移住の場合、「自分のキャリアは後回しになっている気がする」「これまで積み上げてきたものがリセットされてしまう」と感じる方もいます。その気持ちを無理に前向きに変える必要はありません。
大切なのは、「そう感じている自分」がいることを認めることです。
そして、その上で、これからの働き方や暮らし方をどうつくっていくかを考えていくことが重要になります。
キャリアは計画どおりには進まない
ここで参考になるのが、キャリア心理学者ジョン・クランボルツの「ハップンスタンス・ラーニング・セオリー」という考え方です。
クランボルツは、人のキャリアの多くは、予期しない出来事によって形成されると考えました。
実際に振り返ってみると、
たまたま出会った上司、偶然受けた仕事、想定していなかった異動、予想外の転職が、
その後のキャリアに大きな影響を与えていることは少なくありません。
移住も同じです。
自分で望んだわけではない移住が、その後の新しい出会いや働き方につながることもあります。
転機を可能性に変えるために
クランボルツは、予期せぬ出来事をチャンスにつなげるために大切な姿勢として、
「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心(挑戦する意欲)」を挙げています。
例えば、
・これまで考えたことのなかった業界や職種について調べてみる
・地域企業の話を聞いてみる
・移住者の体験談に触れてみる
・まずは移住相談や就職相談を利用してみる
といった小さな行動も、新しい可能性との出会いにつながります。
実際に移住相談の中でも、当初は家族の事情で移住を考え、「自分には難しいかもしれない」と思っていた方が、
新しい仕事との出会いをきっかけに、これまで諦めていた職種への挑戦を決意されたケースがありました。
「自分には無理かもしれない」と可能性を狭めるのではなく、まずは行動してみること。
行動することで新しい出会いや選択肢が生まれ、その中から自分らしいキャリアが見つかることもあります。
移住後に納得感が生まれることもある
移住前にすべてを納得して決断できる人ばかりではありません。
むしろ、
「新しい仕事に出会った」
「地域に馴染むことができた」
「家族との時間が増えた」
「新しい価値観を得ることができた」
といった経験を重ねながら、後になって「結果的に良い選択だった」と感じる方もいます。
また、最初は「家族のための移住」と感じていた方が、移住準備や仕事探しを進める中で、自分自身のやりたいことや新たな可能性に気付き、移住そのものを「自分のための選択だった」と捉え直せるようになることもあります。
移住によって人生が変わるのではなく、
移住という転機をきっかけに、自分自身が行動し、新しい可能性を見つけていく。
その過程の中で、移住への納得感が育っていくのかもしれません。
熊本市移住サポートデスクがお手伝いできること
熊本市移住サポートデスクには、「移住することは決まったけれど、仕事をどうするか悩んでいる」というご相談も多く寄せられます。
私たちは求人情報の提供だけでなく、
・これまでのキャリアの整理
・強みや経験の棚卸し
・熊本での働き方の選択肢の紹介
・移住者の事例紹介
・不安や課題の整理 などもお手伝いしています。
皆さまが、ご自身らしい働き方や暮らし方を考え、納得して選択できるよう支援しています。
自分で決めたわけではない移住だからこそ
人生には、自分で選んだ転機もあれば、そうでない転機もあります。
しかし、その後のキャリアや働き方は、自分自身で形づくっていくことができます。
家族の都合で始まった移住であっても、その先の可能性まで決まっているわけではありません。
今はまだ不安や戸惑いがあっても大丈夫です。
まずはこれからの働き方や暮らし方について、一緒に整理するところから始めてみませんか。
※本記事は、人生の転機への適応を考えるシュロスバーグの「トランジション理論」および、予期せぬ出来事をキャリア形成の機会として捉えるクランボルツの「ハップンスタンス・ラーニング・セオリー」の考え方を参考に作成しています。

