イベントを通じて知る熊本市民の人柄

2019年の熊本市は賑やかだ。ラグビーワールドカップや女子ハンドボール世界選手権大会、九州・山口地域9県から約40の祭りが一堂に集結する「祭りアイランド九州」など、1年間様々なイベントにより賑わい続ける。それを「くまもと2◯19フェスタ」と名付けてしまうほど、まさに”お祭り騒ぎ”なのだ。

普段県外で生活する筆者は、この熊本市民の熱気に圧倒されることがある。このパワーは一体どこから生まれてくるのか…。この度その秘密を聞ける機会をいただいた。

熊本城を背景に微笑む男性

熊本市イベント推進課 課長に聞く「熊本市民と祭り」

熊本市民は、新しいことと楽しいことが好きなんですよ。”お祭り気質”と言いますか、どんなに大変な時でも”楽しむこと”に一生懸命なんです。

そう話すのは熊本市イベント推進課 藤田課長。ここで言う”大変な時”とは3年前の熊本地震だ。

震災から約8ヶ月しか経っていない頃、東京ディズニーランドを運営する株式会社オリエンタルランドからパレードを熊本市でやりたいというお話をいただきました。大人気のキャラクターたちが一堂に会するパレードですから、たくさんの人たちが集まるでしょう。誰もが大変な時期に、迎え入れる体制が整うかは大きな課題でした。

交通整理から警備員の配置など、考えただけでも気が遠くなりそうな課題。しかし市民の力を合わせ体制を整え、当日は市内外あわせ11万人もの人が来場した。

震災の話は、暗い気持ちになる人がまだいると思うから…。

と気遣う藤田課長。それでもあの出来事は、改めて市民の力に驚かされ絆を感じた大きな経験として、語り継ぐ必要があると考えている。
震災からわずか10ヶ月で開催した”熊本城マラソン”。毎年応援にかけつけてくれる県外の方々が「毎年応援に来るたびに熊本市民のパワーに驚いて逆に元気づけられます!」「熊本市のみなさんって凄いんですね!」とメッセージをくれる。

そうでしょう!熊本市民って凄いでしょう!と、嬉しくなってつい自慢したくなるんですよ。

応援してくれる人からのエールは、藤田課長だけでなく多くの市民にとってもさらなる原動力になっていることは間違いない。

2018秋 太鼓響演会
2018秋 太鼓響演会
2019春 戦国パーク
2019春 戦国パーク

市民が開催を待ちわびる「江津湖花火大会」

江津湖の花火大会は、市民にとって特別な存在なんです。

江津湖の花火大会は1973年火の国まつりの目玉として、上江津湖で開催したのが始まり。それから藤崎台球場や下江津湖…と場所や内容を変えながら開催した結果、市民にとって夏恒例の楽しみとなった。しかし全国で花火大会における安全管理が問題に。この大会も例にもれず、2010年を以て終了となった。その報を受けた市民の落胆は、想像に難くない。

それから4年、就任したばかりの大西一史市長は公約の「江津湖花火大会の復活」に動く。そして2015年、下江津湖での花火大会は再スタートした。
くまもと219フェスタ」の今年は、市制130周年記念ということもあり10130発の花火が打ち上がる

”水の都”熊本市のシンボルである江津湖。そこで打ち上げられる花火は水面を華やかに彩ります。その光景が非常に幻想的なんですよ。そこが”江津湖の花火大会”の魅力なんです。

今年の江津湖花火大会の日は雨予報が出ている。しかし、藤田課長は、

今時の打ち上げ花火は多少の雨ぐらいなら大丈夫。きっと開催できると思っています。

不安な気持ちはあるだろうに、前向きな藤田課長を見ていると、「これが熊本市民の気質なのかなぁ」と感じた。

思えば、私がこれまで出会った熊本市の人たちはフットワークが軽やかで前向きな人が多かった。自分もどんどん巻き込まれよう!といった行動が印象的。藤田課長のお話がスムーズに腑に落ちたのは、いつでも前向きに進む熊本の人たちを、何度も目の当たりにしてきたからかもしれない。

Photoby 大塚淑子

そして2019年8月31日、花火大会当日。
前日からの悪天候が続き、雨が降ったり止んだりといった空模様。そんな天気にも関わらず、多くの観客が江津湖沿いの絶景ポイントを探して集まってくる。可愛い浴衣を着た来た女の子やカメラを構えた年齢・性別・国籍を問わず多くの人たちがこの日を待ち望んでいた様子が伺える。

Photoby 大塚淑子

19時半。打ち上げ開始時刻を前に来場者がざわつき始めている。昨年は台風の影響で中止だったこともあり、「今年は大丈夫かな?」そんな声が聞こえる中、なんとか打ち上げスタート。念願の花火に歓声と「よかった〜」という安堵の声も聞こえた。

江津湖花火大会といえば、音楽に合わせて打ち上げる“ミュージック花火”が見どころ。特に、ラストを飾ったQUEEN「I WAS BORN TO LOVE YOU」は圧巻の演出。雨上がりの空、涼しい風が通り抜ける湖のほとりから観た花火は、夏の終わりを感じさせた。

花火
Photoby 大塚淑子

大規模イベントは、市民だけでなく市外から訪れる多くの観光客による経済効果が大きい。この日も色んな地域からの観光バスがズラリと並んだ。熊本市の人たちの頑張りがこうして経済効果に結び付くのは素晴らしいと思う。これからも熊本市の”祭り”はますます活気を帯び、盛り上がりをみせて行くのだろう。

新しいこと・楽しいことが大好きで、未来へ前向きに進もうとする人たちが暮らす熊本市。もし、この街に住んだらちょっとやそっとの悩みや不安も前向きな気持ちに変えてくれるような楽しい仲間ができるかもしれない。

江津湖花火大会(えづこはなびたいかい)

住所:〒862-0906 熊本県熊本市東区広木町935−1

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熊本はどうデスク ライター紹介

ひえだ

檜枝 香

ひえだ・かおる/カラクリワークス株式会社所属。猫かぶり型コミュニケーター。「昨日の自分が知らなかったことを今日の自分が体験・経験すること」に喜びを隠せない性分。福岡県出身、福岡市在住。
県外在住の視点から見て感じた、熊本市の魅力を配信します。