楽しさでひとをつなぐ 〜白川夜市〜

暮らしや生活にはいろいろな「楽しみ」があります。もしかしたらほんのわずかなことが、実は子どもにとっては一生の思い出となるかもしれません。

ここ熊本市には「白川」という大きな川が流れています。阿蘇から熊本市の中心部を通って有明海まで流れる一級河川です。街なかから健軍方面に歩いていくと現れる白川に架かる大きな橋「大甲橋」を渡れば、白川「緑の区間」が見えてきます。ここでは定期的に『白川夜市』というお祭りが開催されています。

白川の河川とお祭り

日暮れ前の祭りの序盤には、キラキラと水面に映る西日とそよそよと木々を揺らす風、子ども達の笑い声に溢れた空間が河川敷に広がります。出店に目をやると、流行りのタピオカや写真映えしそうなかき氷、グルメ通も唸らせそうなお肉の塊、ビールやサイダーを売る屋台など「これぞ祭り!」といった雰囲気。飲食店をはじめとした屋台が30店舗ほど軒を連ねており大にぎわいです。

ヨーヨー取りを行う子どもたち

そんな中、子ども達の「いらっしゃいませ〜!」と言う甲高い声が響きます。はじめは「親のお店の手伝いかな?」なんて思っていましたが、近づいてみれば子ども達が群がるテントが幾つか連なり、お店を運営するのもお客さんも子どもだったことに驚き!
物販もあれば、ちょっとしたゲームを提供している屋台もあり、それぞれに熱狂し生き生きした子ども達が印象的でした。

このお祭りは、水辺の新しい可能性を創造していくプロジェクト『ミズベリング』の一環で、水辺の空間利用を行うことで地域の活性化を目指す「白川『緑の区間』の利用を考える協議会」を中心に、市民や企業、行政が一体となり、実証実験として取り組んでいるイベントです。
運営に携わる『Shirakawa Banks』は、白川が大好きなメンバーで結成された団体。阿蘇から熊本市の中心部を通って有明海まで流れる白川には、まだ生かすことのできていないポテンシャルがたくさんあると感じ、チームとして主に「緑の区間」(大甲橋と明午橋の間の河川敷)で活動しています。

『Shirakawa Banks』の代表であり、『白川夜市』の立ち上げ人であるジェイソン・モーガンさんは「地域の繋がりが見えてきた」と語ります。

白川夜市の発起人とお祭りの模様
『Shirakawa Banks』の代表であり、『白川夜市』の立ち上げ人であるジェイソン・モーガンさん

「この夜市をはじめたきっかけは僕が代表を務める『Shirakawa Banks』の存在があります。この地域で生まれ育った人や、僕のようにこの近隣で商売をしている人で構成された団体で、国土交通省が行なっているプロジェクト『ミズベリング』の一貫であるマルシェに参加したんです。これは水辺の利用者を増やし水辺を徹底的に利用する事を目的としたプロジェクトなんですが、参加してみて白川沿いのこの場所にすごく魅力を感じたんです。

そこで他のメンバーに教えてもらったのが“夜市”という存在。僕はアメリカのニュージャージー出身で“夜市”を知らなかったんですが、地域には当たり前のように存在していて、子どもの頃の楽しみだったと言う声を聞き、そんなお祭りがこの場所で出来ればいいなという思いで立ち上げたのが『白川夜市』です。」

2018年6月から始まったこのお祭りは、2018年には3回、2019年3月より毎月開催しており、だんだんと定着。訪れる人がその都度増え、それに伴い出店応募者数も増えてきたそうです。

屋台を切り盛りする少年

「また、白いテントは子ども達が運営しているお店です。『一般社団法人くまもとターボ』の活動のひとつ“キッズアントレプレナーシップ”によるもので、子ども達が店長や社長となり、出店の企画から実践まで行い、自ら課題を見つけ解決する力を養う事を目的に行われています。このお祭りの2割の出店者は子ども達で、他のお店より売り上げ高いんじゃないかな?と思うほど、子ども達の熱気や頑張りに圧倒されていますよ。」

なるほど。普通の夜市と何か違った印象があったのは、子ども達が自ら率先し祭りを盛り上げている様子に、独特の熱気を感じたからだった事に合点がいきました。またジェイソンさんが今後についても話してくれました。

「これから少しずつ出店も増やしていって、これがただの楽しい出来事ではなく、役に立つ場所になればいいなと思います。例えば、ここで野菜やくだものなどが買えるような事が出来ればいいですね。また、橋の下で面白いことをやったり、夜市でアートギャラリーを開いたりすることも考えています。このエリアにはお店も密集していて住んでいる人たちもたくさんいます。周りの人が集まりコミュニティが強くなれば、防犯面や災害面で何かあった時に協力できるようになると思います。白川夜市を通じて「楽しさでひとをつなぐ」まちづくりを目指して、これからもこの場所で続けていきます。」

夜市でビール

ジェイソンさんの熱くあたたかな言葉を聞いている間に日が落ちて、時間は19時過ぎ。「これぞ夜市」といった雰囲気で辺りは包まれていきます。夜も深くなった頃に、もう一度会場を歩いてみたところ、日中よりも祭り独特の活気をさらに感じ、また水辺で開催されることもあって夏でも不思議と暑くなく、心地よい時間を過ごせました。

仕事を終えた人や、橋を歩く人が「何かやってる」と、ふらりと立ち寄れる雰囲気が、この街の在り方を象徴しているようでした。熊本市の魅力をぐっと身近に感じる事が出来る1日となりました。

白川と河川敷の夜市
賑わう夜市を楽しむ人々

白川夜市(しらかわよいち)

会場:白川河川敷「緑の区間」
日時:毎月第4土曜日の16:00〜22:00
開催されない月もございます。開催状況はShirakawa Banks公式サイトよりご確認くださいませ。

https://shirakawabanks.site/

share
tweet

熊本はどうデスク ライター紹介

大塚さん

大塚 淑子

おおつか・よしこ/1985年生まれ。福岡県八女市出身。大学在学中より好きな写真を気まぐれに撮り集め、好きな文章とも関われる雑誌編集者を目指す。フリーペーパーの編集を経て、熊本の出版社『ウルトラハウス』に入社後副編集長を務める。
2019年よりフリーの編集者・フォトグラファー・ライターとして活動。
熊本住居歴/13年