定年退職を機に熊本へ。自分たちらしいライフスタイルを選ぶ
東京のデザイン事務所を定年退職後、熊本市に移住した松田直明さんと妻の美紀さん。首都圏で暮していた頃と比べて、働き方や趣味の時間、交通手段など、さまざまな変化があったといいます。移住のきっかけや過程、熊本市での暮らしについて詳しく聞きました。
コロナ禍をきっかけに「場所に縛られない働き方」を選択
—はじめに、松田さんご夫妻が熊本市に移住された経緯を教えてください。
【直明さん】私は元々東京にあるデザイン会社でグラフィックデザイナーとして働いていました。妻が熊本出身なので移住前から何度か熊本を訪れたことはあったのですが、「自然が豊かで住みやすそうな街」という印象は持っていましたね。勤めていた会社は車・バイク関連の広告を主に制作していたのですが、阿蘇の自然を背景に動画の撮影をすることも多く、その雄大な景色は前からとても気に入っていたんです。
50歳を迎えた頃から、「定年後どういう暮らしをしようか」ということを妻と一緒に話すことが増えました。そんなときに、熊本に住んでいる妻の両親と一緒に暮らすというアイデアが出てきたんです。妻は一人っ子ということもあり、私自身、住む場所にそこまでこだわりがあるわけではないし、熊本のことは好きだったので前向きに移住の準備を進めました。
そんなことを考えているうちに、2020年、世間はコロナ禍に。私も妻も完全にテレワークとなったことで「場所に縛られずどこでも仕事はできるんだ」ということに気付かされましたね。定年退職後、2022年9月末に熊本市中央区に移住してからはフリーランスのデザイナーとして、自宅や、お気に入りのカフェを巡りながら気ままに仕事をしています。重要な撮影があるときは飛行機で現地に行ったりしていますが、東京の同業者とビデオ会議もできるので、ほとんど熊本で仕事は完結していますね。
【美紀さん】私は東京の会計事務所に勤めていたのですが、夫からのすすめもあり、移住後もテレワークで勤務できないか、ダメもとで会社に打診をしてみたんです。そうしたところ、ちょうど会社も従業員の働き方を模索していた時期だったようで、完全テレワークでの勤務が認められて。幸いにも同じ会社で今も働くことができています。
仕事が理由で移住を踏みとどまっている人は、今勤めている会社に打診をしてみるのも一つの手かもしれませんね。通勤圏外の人でも勤められる会社は今後増えていくと思うので、本気で将来のことを考えている会社であればきっと受け入れてくれると思いますよ。
—移住に際して、松田さんは熊本市の移住相談窓口(熊本市UIJターンサポートデスク )を積極的に利用されたとお聞きしました。
【直明さん】2021年9月にはじめてオンラインで移住相談をしました。その後も、たびたび移住相談で市役所を訪れたり、移住イベントに参加したりしていろいろな情報を集めました。先に移住された方に連絡をとり、お話を聞いたりもしましたね。先輩移住者の生の声を聞けて、とてもいい経験でした。
そうした情報集めと並行して、移住後の物件探しも進めました。義母が他界したことや、状況の変化もあり妻の実家のそばで賃貸マンションの物件を探していたんです。そうしたら、売りに出されている団地の物件を見つけて。価格的にもお得だったので、購入して私たち好みにリフォームをすることにしました。
首都圏での暮らしは、生活を維持するだけでとてもお金がかかります。その反面、熊本は物価も地価も安いので、こちらに来て生活をしたほうが暮らしはより豊かになると感じていますね。私たちがいま住んでいる団地は、かなりお得で新車を買うくらいの値段で購入できました。住まいにかけていたお金を趣味や好きな食事にあてられるので、とても有意義な生活を送れていると感じています。
趣味を満喫しながら、健康にも気を遣う生活に
—お休みの日は、どのように過ごされていますか?
【直明さん】アウトドアが好きなので、東区にある江津湖や甲佐町の緑川のほとりをサイクリングしたり、県内の山をトレッキングしたりして楽しんでいます。もともと、熊本に移住する前から二人ともアウトドア派で、首都圏にいたころは5年連続で富士山山頂へ登山したりしていました。熊本に来てからはそれがもっとアクティブになりましたね。今年はカヤックを購入して、川下りに挑戦もしましたよ。
首都圏にいたときは、比較的近い山に行くにしても高速道路が渋滞することを考えると早朝5,6時ぐらいには自宅を出る必要がありました。熊本だと近所に魅力的な山がたくさんあって渋滞も少ないので10時ぐらいに出発しても十分楽しめるのがいいですよね。阿蘇近辺は特に車やバイクで走ると気持ちいい場所なので、ツーリングが趣味の人にもおすすめです。
【美紀さん】最近は健康を意識して、日ごろから夫婦でトレーニングジムや自転車で汗を流しています。熊本に移住する前、夫が体調を崩したことがきっかけなのですが、趣味をおもいっきり楽しむためにも、特に健康に気を遣うようになりましたね。
【直明さん】今住んでいる九品寺地域は市街地まで徒歩・自転車で行けるので、近場を移動するときはほとんど車を使っていません。坂道もあまりないので、中央区を移動するだけなら自転車が最強だと思います(笑)。熊本は車社会で、通勤時車に乗って移動されている方が多い印象なのですが、せっかく快適に走れる道が多いし健康のためにもいいのに皆さんもったいないなと感じていますね。
観光地ならではの活気がある熊本の街が好き
—改めて、熊本市での暮らしについて気に入っている点を教えてください。
【直明さん】やっぱり「水がきれいなこと」ですね。生活に使う水道水がすべて地下水でまかなわれているということはもちろん、「車通りの多い市街地に、地下水が湧き出る澄んだ川が流れている」という事実がなにより衝撃でした。近所の加勢川は、散歩道も整備されていて清流を楽しみながら散策ができるので、ぜひ熊本を訪れた際は足を運んでほしいです。
【美紀さん】あと、夫はよく「観光地の中心地に住めるのがいい」「観光地楽しい!」ということを言っていますね。私は高校まで熊本市に住んでいたので正直ピンとこないのですが…(笑)。
【直明さん】他県や首都圏から来た人だからこそわかることかもしれませんね。やっぱり熊本の街中は活気があるんですよ。観光客向けのものから、地域住民向けのものまで常にいろんなイベントが開催されているので、そうした催しもとても楽しい。観光地ならではのよさだと感じています。
—最後に、熊本市への移住をお考えの方(特に定年退職後の移住を検討されている方)にメッセージをお願いします。
【直明さん】「仕事中心の生活だったから定年退職したら何にもやることがなくなってしまった。定年退職しても、やりたいことはそんなにできない」という方が多くいるという話をよく聞くのですが、熊本に来れば全然そんなことはないと感じています。先ほどお話したように、必要な住居費も首都圏とは違うので、こちらに移住したら比較的余裕がある生活を送れると思いますよ。お金に余裕ができた分、自分がやりたかった趣味や新しいライフスタイルも実現しやすいのかなと感じています。
また、なによりも熊本は自然が豊かなのが魅力で、阿蘇をはじめとした山々もあり、天草や芦北などの海もある。熊本は九州のど真ん中にあるので、近県の観光地に簡単に遊びに行けるのもいいですね。温泉からアクティビティ、おいしいご飯まで楽しみは尽きないと思います。「そもそも趣味がない…」と思われている方でも、きっとやりたいことや楽しみが増えると思いますよ。
お名前:松田直明さん
取材時の年齢:60代
ご職業:グラフィックデザイナー
移住歴:2年目
移住前の居住地:神奈川県川崎市
お名前:松田美紀さん
取材時の年齢:40代
ご職業:会計事務所勤務
移住歴:2年目
移住前の居住地:神奈川県川崎市
※記載の情報は、すべて取材時のものです。