働き方が
変わった

熊本だからこそ、「自分」を出す働き方を見つけられた。

熊本でグルメ情報を探すなら、まずはこのサイトを見るという人も多いかもしれません。「けんさむの熊本紹介」は、月間100万PVを達成したという人気ブログサイト。運営するけんさむさんもブロガーとしての枠を超え、今や熊本を代表するインフルエンサーとして多方面で活躍しています。そんなけんさむさんですが、実は熊本出身ではありません。福岡郊外の町で生まれ育った彼が、いかにして熊本市へ降り立ち、今のポジションを確立していったのかを伺ってきました。

雰囲気のいい店を背景に立つ男性

憧れの東京に出るも、仕事一色だった毎日

ー あんなにも熊本愛あふれるブログサイトを運営されているので、けんさむさんは熊本のご出身だと思っていました。

よくそう言われますが、実はお隣、福岡県出身です。のどかな田舎育ちで、こどもの頃は山に秘密基地を作ったり、野球やサッカーをしたりする、アクティブな少年でしたね。大学も福岡で進学しましたが、この頃は都会への憧れを強く抱いていました。「ドラマに出てくるような、東京のオフィス街の景色の中で、革靴カツカツ鳴らして歩きたい…!」と(笑)。

ー それで就職は、希望通り東京へ?

はい、東京の企業に絞って就活を進め、無事、東京に本社がある大手IT企業へ就職できました。ところが、わずか2〜3ヵ月で都会暮らしが辛くなってしまい…(笑)。憧れの都会の雰囲気は楽しめたのですが、とにかく人混みがダメだったんです。幸い就職した企業は全国に拠点があったので、地方への異動に名乗り出て、広島、神戸、大阪などあちこち転勤しました。

ー 熊本に来る前に、いろんな土地での暮らしを経験されているんですね。

とはいえ「仕事しかしない」生活だったので、どこに住んでも同じといえば同じでした。今振り返るともうあんな働き方はできない、というくらいハードに仕事一色。でも当時はそういうライフスタイルが楽しくて、やりがいを感じていましたね。

ブログの更新を行う男性
デスクワーク中のけんさむさん

熊本でのある飲食店との出会いが、人生を大きく変える

ー そんな日々を送る中で、熊本市に来ることになったきっかけは?

就職して3年が経ち、「もう都会での暮らしは十分に楽しんだなぁ」と思っていた頃、尊敬する上司が独立して故郷で会社を立ち上げることになって、そこに誘われたのがきっかけです。その上司の故郷こそ「熊本市」だったのです。

熊本は福岡の隣県とはいえ、学生時代に阿蘇にツーリングしに来たくらいで、私にとっては意外に縁がない土地でした。そもそも、私は「どこに住むか」にあまりこだわりがなく、その上司と仕事ができればどこでもよかった。私もゆくゆくは起業を目指したかったので、単に「仕事の次のステップ」というだけの思いで、家族と共に熊本市に来ました。2014年のことです。

お店や企業のECサイト設立や運営をフォローするIT関係の会社で、全国にいる顧客に向けて仕事をする日々。食べることは好きでしたがグルメ通というわけでもなく、チェーン店でばかり外食をするタイプでした(笑)。

ー 当初は熊本に愛着があるわけでもなく、グルメにもこだわりがあるわけでもなかった。そんなけんさむさんが、あのようなブログを始めることになるんですね。

熊本に来て3年が経ったころ、知り合いの勧めで「亭ノ元」(熊本市北区貢町)に食事に来たんです。居心地良い和の空間、だご汁のおいしさなど、このお店のすべてが素晴らしく、とても感激しました。「亭ノ元」のことをもっと知りたくなって、帰宅後にネットで調べてみたのですが、いわゆる大手グルメ口コミサイトしか出てこない。そこには料理の価格など断片的な情報しか載っておらず、お店の雰囲気とか空気感まではわからなかったんです。

だご汁定食

そこで思ったのが、「熊本にはネットに載っていないだけで、同じように素晴らしい空気感やこだわりを持っているお店はたくさんあるのかもしれない。そして、その情報を知りたい人も多くいるはず。僕がそこを伝えられるようなサイトをつくろう」ということ。この「亭ノ元」との出会いをきっかけに、ブログサイト「けんさむの熊本紹介」を始めることになりました。

自分という「個」を活かして働く

ー ブログはどのように始められたんですか?

仕事柄Web関係のノウハウがあり、趣味でカメラも持っていたため、「毎日きちんと更新する」「お店の空気感まで伝わるよう、客目線で臨場感ある写真や記事にする」ことを大事に、ブログを上げていきました。とはいえ、平日に本業をしながらなので、土日に1週間分のお店を回って、平日に毎日1軒ずつ記事を上げていく、という毎日。土日は1日3〜4食をお店で食べる日々でしたが、それだけ頑張っても最初は、サイトの閲覧数が1日数名程度…(笑)。ちょっと心が折れそうでしたが、ブログサイトは毎日継続することが大事だとわかっていたので、ネタ探しに取材にと頑張りました。

それから1年半くらいで収益が上がるようになり、この4年で1000店舗以上の情報を載せて、2020年2月には月間100万PVも達成。YouTubeチャンネルも開設し、2022年にはこのブログサイト運営のための会社も新たに立ち上げました。地元情報誌やローカルテレビ番組でコーナーを持たせていただいたり、自治体と共同で熊本の魅力を発信する事業に関わらせていただくなど、熊本に根付いた幅広い活動のチャンスもいただいています。

ー 1000店舗以上のお店を回ったけんさむさんが感じる、「熊本の食の魅力」とは?

料理の水準がとても高いと思います。おいしい地下水と、そこから育まれる野菜。質の良い肉や魚。食材との距離が近いのでもちろん新鮮ですし、都会ではあり得ないくらい価格も安い。こんなに良い食材を当たり前に使えるということは、飲食店にとってかなりのアドバンテージだと思います。その上、芦北地域で生産されている「サラたまちゃん」や、主に八代地域で採れる「塩トマト」など、各地で個性的な作物も開発されていて、独自の食文化を生み出しているのも魅力的ですね。

取材を受ける男性

ー 住んでいる場所に興味がない「仕事人間」的な生き方から、個性を活かし、熊本に根付いた仕事に取り組む今のライフスタイルへ。ここまで大きな人生の転換ができたのは、なぜでしょうか?

「熊本市」という街の規模感が自分に合っていたからかなと思います。より大きな経済規模の中で働きたいのであれば、東京や福岡などの都市圏に住む選択になると思いますが、「自分」という個を活かして仕事をしたいのならば、熊本市は程よいコンパクトさで、ちょうどいい規模感だと思います。「けんさむ」のブログ運営に際しても、熊本市の人口・お店の数含めて、規模感が自分に合ってたからここまでできた。福岡などのもっと大きな都市だったら、ここまでのものは作れなかったし、そもそもブログを始めなかったと思います。

そういう意味では、熊本市は私に「本当の自分」を発見させてくれた街でもあります。熊本市に来てさまざまな体験をする中で、「あ、俺は会社員向いてなかったな」ってはじめて気付かされましたし(笑)。人混みに埋もれることなく「自分」を見つけてそれを武器に働くことができる、そんな街だと思います。

それに、熊本市にはクリエイターなど予想を上回る人材が豊富で、多くの刺激的な出会いが叶います。本当に、面白い人がいっぱいいるんですよ(笑)。

ー 何者かになりたい、そんな思いが、熊本市で叶ったということですね?

実は、小学生の時の卒業アルバムに、将来の夢を「カリスマになりたい」と書いていたんですよ(笑)。すっかり忘れていたんですが、熊本市でインフルエンサーと呼んでいただけるようになって、自分のこどもの頃からの夢も思い出せました。

カリスマというにはまだまだ及ばないとは思いますが、自分の足で稼いだ1000店舗の情報と、月間100万PVという実績は誇りたいところです。これからも熊本に根付いて、もっと熊本の魅力を広く発信できるような活動をしていければと思います。

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お名前:けんさむさん
取材時の年齢:30代
ご職業:ブロガー
移住歴:8年目
移住前の居住地:福岡→東京→広島・神戸・大阪ほか(転勤にて)

けんさむの熊本紹介

https://somekenblog.net/
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