移住して芽生えたふるさとへの思い。県庁職員の道へ
2019年に東京から熊本にUターンし、熊本県庁の職員として働いている福永さん。東京での忙しない毎日から一転、熊本では、自分の心と体の状態と向き合いながら前に進めるようになったと笑顔で話します。県庁で働くに至った経緯や、仕事のやりがい、熊本の暮らしの魅力などを聞きました。
毎日全力で走っていた、東京での生活
ー東京ではどのような生活を送っていらっしゃいましたか?
大学進学を機に上京して東京のメーカーに就職し、約7年間、東京に住んでいました。電車で1時間かけて通勤して夜遅くまで働き、休みの日は友人たちといろんなところに遊びに出かけるなど、仕事もプライベートも充実していましたよ。ですが、今思い返すと、毎日150パーセントの力で頑張っていて、力んでいたなあと思います。
ー 熊本に帰ろうと思ったきっかけを教えてください。
熊本に住む母親が体調を崩しがちになって…。母は、私が仕事が忙しい時に、東京まで家のことを手伝いに来てくれていたんです。そんな母が体調を崩したと聞いて、甘えてばかりではいけないな、と思ったのが最初のきっかけでした。
さらに後押しされたのが、あるファッション雑誌で見た移住特集。地方に移住した人の満足度が高いという記事を読んで、熊本に帰ることを具体的にイメージし始めました。そして、東京・有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」に連絡することから行動してみました。
そこで家探しや仕事探しについて話を聞きましたが、家族のもとに帰ることが移住の一番の目的だったので、まずは益城町にある実家に住むことにしました。2019年のことです。熊本に帰った時は仕事を決めていませんでしたが、それまで全力で毎日を過ごしていたので、これからの人生についてゆっくり考えようと思っていました。
社会の根幹を担う仕事にやりがい
ー現在は熊本県庁で働いていらっしゃいますね。なぜ採用試験を受けようと思ったのですか。
熊本に帰ってから、本を読んだり旅行に行ったりする中で、「自分は何がやりたいのか」と考えました。それまでの生き方を振り返ってみて、旅行関連の仕事をしたいと思っていたところ、偶然、熊本県庁の観光企画課で、年度更新の会計年度任用職員を募集していることを知り、応募したんです。
その後採用が決まり、行政サービスを提供する立場として働いたことが転機となりました。2020年にコロナが流行り始めた頃に、どうやって観光客を受け入れていくか、観光業者の皆さんをどう支援していくかを考える職員の姿を見て、行政の役割を実感しました。観光等に関するルールづくりを主導して進め、情報発信する役割を行政が担っていることを再認識し、これまで当たり前に暮らしてきた社会が、たくさんの方の努力によって支えられていることにとても衝撃を受けました。
こうした経験から、社会の一員として、熊本にゆかりのある人間として、ふるさとに貢献したいと思うようになり、熊本県庁の社会人採用枠の試験を受けることを決めました。
ー 県庁の社会人採用枠は、とても狭き門ですよね。しかも働きながらの試験勉強は大変だったと思います。
はい、1次の筆記試験前の1ヶ月半は、とにかく勉強を頑張りましたよ! 平日は9時から16時まで働いて帰宅後に勉強、休日は1日中勉強していました。専門学校には通わず、問題集を購入してたくさん問題を解く、という勉強方法です。公務員の試験勉強や面接のコツを教えてくれるYouTube動画もあったので、それも参考にしていましたね。ちょうど新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が出た時期だったので、勉強に集中できる環境だったのも大きかったです。
心が折れそうになることもありましたが、その時、観光企画課で一緒に働いていた同僚がとても良い方ばかりだったので、「ずっと一緒に働きたい」という思いがモチベーションにつながりました。1次の筆記試験、2次・3次の面接試験を終え、無事に合格できた時は本当にうれしかったですね。
ー 2022年4月に入庁され、今は土木部の監理課に所属されていますね。どんなときに、仕事のやりがいを感じますか。
土木部は、道路の整備、河川の改修など、県民生活に欠かせないインフラ整備の役割を担っています。
私の故郷の益城町は熊本地震で大きな被害を受けましたが、壊れた道路の整備、川の堤防の整備など、新たなまちづくりに向け、目に見えるかたちで復旧・復興が進んでいます。実家の両親から「あそこの道路きれいになったね」とか「地震で壊れた橋が新しく架かって助かる」などと言われると、やりがいを感じるとともに、改めて県民のみなさんの生活に直結する重要な仕事なんだなと、気持ちが引き締まります。
移住して心の余裕ができ、心と体が健康に
ー 熊本市で生活してみて、良かったと思うのはどんな時ですか。
熊本市は交通の便が良く、バスや市電などの公共交通機関が発達しているので、車を持っていない私でも不自由なく移動できます。
また阿蘇が好きなので、休日はよく友人とのドライブで遊びに行きますよ。熊本市から車で1時間程度で行けるんです。阿蘇には、古民家を改装した店など、中の雰囲気が良くて、しかも食べものや飲みものも美味しいところがたくさんあります。東京は店の数が多いですが、人気だと聞いて行ってみても「ハズレだった」と思う店も多くて…。今、車の納車待ちなので、納車されたらもっといろんなところにドライブに行くのが楽しみです!
ー 移住してどんなところが変わったと思いますか。
“自分との向き合い方”が変わりました。先ほども話しましたが、東京では毎日全力投球で、少し体調が悪くても無視して突っ走っていました。周りもみんな忙しなかったので、自分だけが止まるわけにはいかない、と思っていたんです。
そんな生活を一度リセットして熊本に帰ってきて、自分の体の声や、今の気持ちに問いかけながら、前に進んでいけるようになりました。「少し休みたいな」という弱い自分も受け入れられる、心の余裕もできたように思います。心と体が健康になりましたね。
ー 最後に、熊本への移住をお考えの方にメッセージをお願いします。
一度熊本を出て生活してみたり、いろんな国に海外旅行に行ったりして改めて思うのは、熊本が一番、都市と田舎のバランスがいいということです。都市と田舎のどちらも身近にある暮らしはとても居心地がいいですね。
サポートの面でも、熊本市UIJターンサポートデスク移住支援員の池田さんなど、相談窓口の方が親身に対応してくださったのでとても助かりました。移住する前だけでなく移住後も、相談に乗ってくださったり、移住者同士の交流会に誘ってくださったりと、変わらず寄り添ってくださいました。移住した後、心細かった私の心の支えでしたね。熊本市は、こうしたソフト面でのサポートも万全ですので、安心して移住してきてください。
※記載の情報は、すべて取材時のものです。